アトピー性皮膚炎とは
強いかゆみのある湿疹ができ、症状が悪くなったり良くなったりを繰り返す病気です。ぜん息やアレルギー性鼻炎などのアレルギーをもっている場合や、アレルギーの病気を持つ家族がいる場合、またはアレルギーの原因となるIgE抗体をつくりやすい素因(=アトピー素因)を持つ人がなりやすい傾向があります。アトピー性皮膚炎は、「バリア機能」(外界のさまざまな刺激、乾燥などから体の内部を保護する機能)が低下して、炎症が起きやすくなっています。また炎症が生じるとかゆみを感じやすい状態となり、掻くことによりさらにバリア機能が低下するという悪循環に陥ってしまいます。
症状
アトピー性皮膚炎の特徴として左右対称に症状が現れます。 また、痒みを伴う湿疹であることや乳児では2ヶ月以上、幼児からは6ヶ月以上という長い期間にわたって持続的に症状がでることも特徴です。
治療
アトピー性皮膚炎の治療は
- 薬での治療
- スキンケア
- 悪化させる原因の対策
の3つを組み合わせた治療が基本になります。最終的には、あまり薬での治療を必要とすることなく日常生活に影響がない状態が続くことを目標とします。
1.薬での治療
アトピー性皮膚炎の治療は塗り薬(外用薬)や飲み薬(内服薬)、注射薬、紫外線を使った治療などがあります。補助的に保湿剤によるスキンケアやかゆみを抑える内服薬を一緒に使います。
外用薬
炎症やかゆみを抑える局所的な対応です。
- ステロイド薬
- カルシニューリン阻害薬
- ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬
- ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬
全身療法
内服薬
- カルシニューリン阻害薬
- ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬
- ステロイド薬
注射薬(生物学的製剤)
- デュピルマブ
- ネモリズマブ
- トラロキヌマブ
- レブリキズマブ
他にも、紫外線療法などがあります。
2.スキンケア
保湿外用薬(保湿剤・保護剤)を使うことで、低下している皮膚の水分含有量を改善し、皮膚バリア機能を回復します。それを維持することで炎症やかゆみの再燃予防につながります。
皮脂汚れや汗、皮膚の常在菌が皮膚症状のを悪くする要因となりうるため、入浴・シャワー浴も皮膚を清潔に保つには重要です。
3.悪化させる原因の対策
- 皮膚への刺激
唾液や汗、髪の毛が触れる、衣類とのこすれなどで皮膚症状が悪くなることがあります。唾液や汗は洗い流す、ふき取りましょう。髪の毛の先端や衣類の刺激などの軽い刺激でも痒みは生じるため、髪の毛を束る・刺激の少ない衣類を選ぶなどの工夫が必要です。 - 接触アレルギー
塗り薬、化粧品、香料、金属、シャンプー・リンス、消毒液などでかぶれることがあります。思い当たることがあれば、接触を避けることが重要です。 - 食べ物
特に乳児では食物アレルゲンが関与していることがあります。しかし、不適切な除去で成長や発育障害という栄養学的な問題もあるため、行う場合は食物アレルギーの評価を十分に行うべきです。一般的にアレルゲンになりやすいという理由で特定の食べ物を除去することは推奨されません。 - 吸入アレルゲン
ダニ、ほこり、花粉、ペットの毛などの環境アレルゲンで悪化することがあります。 - 汗
アトピー性皮膚炎は発汗量が減少しており、皮膚温の上昇・皮膚乾燥が起きやすくなります。通気性の良い衣類の着用やシャワー浴、濡れた衣類の着替えなど発汗後の汗対策が重要です。 - 細菌・真菌
皮膚の常在する細菌や真菌が皮膚症状を悪化する原因の一つと考えられています。